いよいよ話題にするときが来た!?
まずはじめに・・・この問題、実はずーっと前から取り上げたかったのです。
実は動画化することも検討し、弁護士の先生にもご相談させて頂き、出演して頂く方向で準備を進めていました。
ところが、とあることからその計画を中止するほかなくなってしまい、お蔵入りしてしまっていました。
そちらについては、後でお話ししますね。
しかしここ最近、この問題があらぬ方向へと進み始めており、これがデザインの世界において大きな影響を与えつつあります。
ここまでくると、さすがに同業の方からもちらほらとご意見が挙がってくるようになりましたので、今回ブログという形で私たちも取り上げておこうと思います。
ただし、当サイトの方針として具体的な個人や会社名などを取り上げてお話しすることはありませんのでその点はご理解ください。
実は以前から問題は散見されている
実は『トレパク』という問題。 これは今回にはじまった話ではなく、昔から度々発生している問題です。
なぜ繰り返し発生するのでしょうか?
これにはとーっても難しい問題があるからなんです。
作者に著作権などに関する知識が少ない
最も問題にすべき点は『作者の意識』の問題です。
作成した作品には基本的に『著作権利』が発生します。
これはイラストに限らず、写真にだって発生します。
『人物』を撮影しているならその人の『肖像権』が発生します。当然ですよね?
ところが『風景』を撮影していたとしても『著作権利』は発生します。
え?風景は自然なんだから権利は発生しないだろ!
いいえ、発生します。 なぜならその写真を撮るにあたって、撮影者が『画角』を考えて撮影しているから。 その画角を決めるという行為が撮影者のオリジナル。 なので『著作物』として認められるんです。
このように著作権に関しての知識が乏しいクリエイターが一定数いると言うことは事実ですし、問題にしていかなければならないところでしょう。
採用する企業側ではチェック・証明できない
次に企業側の問題・・・というか、これははっきり言ってどうしようもないお話なのですが、
企業側では『トレパク』を指摘することは不可能
なんです。
おいおい、企業としてそれはどうなんだよ・・・
と思われるかもしれません。 ですが考えてみてください。
どうすれば『トレパクではありません!』と証明できるでしょうか?
その答えは・・・
世の中の写真・絵・イラストその全てと比較して一致しないことを確認しました!
と言わなければいけなくなるんです。
これは完全に『悪魔の証明』です。 これを証明するのは不可能といっても良いでしょう。
防止する手立てがない
『トレパク』をしてしまう人に法律などの知識が乏しいこと。
そしてそれを採用する側が気づけないこと。
その結果、この問題は度々発生しては話題になるということを繰り返しているんです。
じゃあもし今使ってるクリエイターが法に抵触してたら・・・
はい、採用した企業様は多大な損害やダメージを受けることになるでしょう。
そこで少しでもダメージを軽減するために、クリエイターと書面を交わすと言うことを徹底されている企業様もいらっしゃるくらいです。
つまり、
後で問題が発覚したらそれは全てクリエイターの責任だ
と一筆書かせると言うことですね。
しかしそれではお仕事の関係としては、『クリエイターを信用していない』と断言しているようなもの。
クリエイターとの仲は当然微妙なものになります。
なかなか思った通りには進みません。
著作権の保護期間はすごく長い
『著作権』の保護期間は
著作物が創作されてから、作者の生存期間およびその死後50年まで
です。
つまりトレパク問題は会社にとってはかなり長期にわたって意識しなければならない問題なんです。
しかも昔からクリエイターと関わるお仕事をされている企業様にとっては、何十年も前の作品も『もしかして!?』とリスクを抱えることになります。
各社トレパクの指摘には『恐怖』している
とは言っても、この問題に対して『各社』真剣さが足りてないんじゃ・・・
そう思われる部分はたしかにあると思います。
そもそも『著作権』という問題は、最近でこそ話題になって意識も高まってきていますが、昭和や平成初期の頃はかなり軽視されてきました。 『ソフトウェアの海賊版』いわゆる『コピーソフト』問題や『レンタルビデオ』のコピーなどの話、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
そういった著作権が軽視されていた時代の製品や作品、本当にトレパク要素はないと言い切れるでしょうか?
その当時から『トレパク』という事案を認識して行動できていたでしょうか?
恐らく昔過ぎて、今働いている方の大半は『分からない』と答えると思います。
ということは・・・
いつ指摘されてもおかしくない。
各社そういった恐怖と隣り合わせなんです。
だからこの件について『触れられない』というのが現状だったりします。
私たちも本問題について動画などを検討していました。
しかし、そのような企業が数多く存在すること。 そして、それらの企業にとってあまり掘り返して欲しくない事象であること。
よって、私たちもお付き合いのある企業様のご意向に沿う形で足並みを揃えるほかなかった。
そのためにこの問題を取り上げにくくなってしまったわけです。
なので本来であればこのままお蔵入りだったわけですが、関係者が大きな声を上げられないことで新たな問題が発生していまいました。
いったいなにが起きてしまったのでしょうか。
分かって欲しい『アート』と『デザイン』の違い
このお話をするためには、まず『アート』と『デザイン』の違いをはっきりとさせなければいけません。
ざっくりですが、以下のような違いがあります。
よく『トレパク』問題で注目される方は・・・正直これも人によって異なる部分ではあるでしょうが、恐らく『アート』に属するタイプの方に多いと思われます。
その理由は
- 禁じ手はない
という点です。
アートに禁じ手は本当にないのか?
基本的にアートとは『自己表現』の世界です。
己の感性のままの表現すること、試行錯誤を繰り返すことは決して悪いことではありません。
己を表現するのですから基本的には制約なんてものはありません。
つまり、禁じ手はないと言えます。
しかし、アーティストもひとりの人間であり、どこかの国に住み、その国のルールに従って生活しています。
アーティストである前に、『社会の一員』なんです。
『社会の一員』である以上、『社会的ルール』には従う必要があります。
そのひとつが今回注目された『著作権利』となります。
その禁じ手がルールに反するものであれば、そのルールを知っている人から指摘を受けるのは当然です。
ルールに外れているのですから、場合によっては裁きを受けることもあるでしょう。
一方の『デザイン』は?
一方で『デザイン』は課題の解決です。
課題解決には『時間』や『予算』を考えながら最も良い『結果』が得られるように行動します。
またチームプレイを重視し、複数の人が関わることで『効率』を高めます。
この『効率』の為にはオリジナルにこだわらず、既にある『素材』を活用することも厭わない。
この素材も『チームプレイ』の一環なわけです。
ただし、デザイナーだって当然『社会の一員』です。 もちろんルールは守らなければいけません。
このように実は『アート』と『デザイン』は一見同じようなことをしているように見えても、実際は全然異なる思想で動いていると言うことがおかわり頂けたでしょうか?
で、結局いったいなにが起こっているの?
では、今なにが起きているのかと言いますと・・・
デザインの分野においても『トレパク』問題を指摘される
という事案が発生しはじめているんです。
オリジナル素材を使用しない、自分で撮影した素材を使わないことは『パクリ行為』である。
というわけです。
それは当然でしょ!
恐らくそのように思う方が多いのではないかと思います。
しかしこの指摘が当たり前になってしまうと、日本でデザインの仕事は激変することになり、とんでもないことが起きてしまいます。 場合によっては致命傷となることがあります。
どんなことが起きる?
ズバリ、こんなことが起きてしまいます。
災害についての啓蒙ポスターを作りたい。
かしこまりました。
ポスターの背景には災害の写真を使いたいんだが・・・
『トレパク』なんてせず、ちゃーんとオリジナルの写真を用意してくれ。
では撮影する必要があるので災害が発生するまで待ってください。
真面目にこの現象が発生しつつあります
『・・・冗談でしょ?』
と言いたいでしょうが、これが大真面目に現実化しつつあります。
デザインを完成させるためには大小様々な要素について考える必要があります。
- なにを目的とするか。
- 予算は? 製作期間は?
- その結果、得ようとしている結果は?
- それらを実現させるための方法は?
これらを総合的に考えて作り上げるのがデザインです。
そのデザインの実現のためには必ずしも『オリジナル』にこだわることはありません。
オリジナルにこだわると先程のような具体例が発生してしまいます。
そうなってしまうと『取材費』が発生します。
また、何時発生するか分からない災害を待つことになるのですから『待機期間』が発生します。
そしてなにより、『目的のために災害を待つ』というおかしなことが発生してしまい、結果として
顧客が求める本来の目的が達成できない
ことになってしまいます。
そうなると適切なデザインができなくなるため、世の中のデザイナーは失職することになるのと同時に、この世の中からデザインと言うものがなくなってしまいます。
とは言っても、やはり『デザイン』の世界でもやはり『トレパク』はよくありません。 当然御法度です。
じゃあデザイナーにだけは特権として認めろってコト!?
そんなことはありません。 ルールは誰しも平等であるべきです。 特例は必要ありません。
単純な話、もっと『著作権利』に関しての法律などを理解して欲しいんです。
トレパクにならない条件というものがある
『著作権利』関連の法律についてはあまりに長くなりますし、私は弁護士の先生ではありません。
下手な文章で誤った解釈が生まれてしまうと大変です。 なのでここでの説明は割愛します。
クリエイターの皆さんにとっては、どんなジャンルの方であっても無視してはいけないコトばかりです。
一度しっかりと確認することをお勧めします。
重要な点は、デザイン等において写真などを使用する際に、下記の例外が存在するんだと言うことです。
- 使用する素材を自身で用意した場合
- 他者の素材を利用規約に基づいて使用する場合
自分で撮影した素材を使用することは問題なし
これは当然ですね。著作権利を有しているのが自分なのですから全く問題はありません。
ただしそこに人物が写っている場合、被写体ご本人の許諾があれば問題はありませんが、そうでない場合は『肖像権の侵害』に抵触することがあります。
また顧客の要求するものを、そうそう都合良く持っているものではありません。
よってこれを満たせることはなかなかないと思います。
写真販売のサービスなども規約によっては利用可能
最近よくある『写真の販売サイト』なども
買ったから自分のもの!
・・・ということにはなりません。 そのようなサイトは必ず『利用規約』というものがあります。
その規約内に
- 商用利用可能
- 加工、改変OK
等といった項目があれば、その他記載されている規約に従って使用することは問題ありません。
『写真の無料ダウンロード』サイトもありますが、そういったサイトも規約はあるはずです。
その規約に従って使用するのであれば問題はありません。
問題ないケースがあるということを知って欲しい
このようにルールに従って利用する限り、問題のない素材というものは存在します。
その素材を利用することに対して『トレパク』と言われ、市場によって問題とされてしまうと、これから先様々な分野において『デザイン』に制約が付くことになります。
一度ついてしまった制約は今後の『ルール』となります。
その『ルール』は間違いなく、今後みなさんに返ってくることになります。
それは価格に反映するかもしれません。 もしかすると時間かもしれません。
どちらにしても国内のデザイン業界は大きな痛手を負うことになるでしょう。
『トレパク』問題はたしかに無視できない話です。
ですがこの問題を『デザイン』においても同じものさしで測られてしまうと本当に大変な時代がやってきます。
これを機に皆さんも改めて『デザイン』と言う世界を知ってもらいたいと思いますし、そういった活動を『デザイナー』からしていかなければいけないんだろうなと思わされる事案となりました。
また同時に、お願いですから学校教育の現場でも『アート』と『デザイン』の違いや、『著作権利』に関する理解を深めるような授業を組み込んで欲しいと思いました。
本当に日本人はこのあたりの理解が希薄だと思います。
デザイナーの皆さんも今一度向き合って欲しい
ここまで『デザイナー』はちゃんとやっているように書いてきましたが、たぶん実態はそうではないでしょう。
『デザイナー』の中にも、残念ながら『社会的ルール』を考慮せずに活動している人がいると思います。
今回の『トレパク』問題、『デザイナー』のみなさんは本当に「大丈夫だ!」と胸を張って言えますか?
指摘をされても「問題がない」ことを説明できますか?
説明ができないようなことをしているのであれば、いずれその問題は自分を苦しめることになります。
社会的な信用も失ってしまうことになります。
今一度振り返って、問題があったならば一刻も早く正していく。
プロとして恥ずかしくない行動をとること。
これこそが今『デザイナー』に求められていることだと思います。
私たちも問題になっているからこそ、しっかりと向き合っていきたいと思います。